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宗教系掲示板_皇統・男系継承の神統への拡張


■皇統・男系継承

皇統(初代神武天皇から現在の第126代の天皇陛下)は男系子孫により継承され、皇位継承で男系の血筋を引かない者が即位した例はない。男系継承が皇統の原理であり「万世一系」と呼ばれる。皇統とは血筋(男系継承)であり、国民の評判や当人の人格等は全く関係ない。

■神統への拡張

初代神武天皇を遡れば、日本神話の領域に突入する。初めて性別が分かれた男神イザナギと女神イザナギまでが神統を考える根源(最深部)だろう。神武天皇は男系継承で男神イザナギに繋がっているのかが重要である。結論から言えば、男神アメノオシホミミを女神アマテラスと男神スサノオの両方の子と考えれば、神統でも男系継承は成立する。即ち、皇統・神統を統一する原理として、男系継承が成立する。


■誓約神話の解釈

結論から言えば、天之忍穂耳命は天照大御神と須佐之男命の子供である。天之忍穂耳命の誕生する誓約神話にける須佐之男命の行動は次の通り。

①須佐之男命は天照大御神から天照大御神の勾玉を受け取る。

②須佐之男命は天照大御神の勾玉を高天原の井戸水で漱ぐ。

③須佐之男命は天照大御神の勾玉を嚙み砕く。

④須佐之男命は口から息の霧を吐き出す。

⑤息の霧から五柱の男神が誕生する。※五柱のうち一柱が天之忍穂耳命。

天照大御神から受け取った勾玉を材料としているが、行動を見れば須佐之男命が天之忍穂耳命を生む行動をしている。強いていずれかに絞るならば、天照大御神よりも須佐之男命が親だろう。しかし従来、天照大御神の子と解釈され、神統における男系継承の不成立となっていた。現状、竹田恒泰氏の論文『アメノオシホミミを生んだ神はどの神か-記紀のウケイ神話から神統を考える』の解釈によれば、天照大御神と須佐之男命が共に生んだと結論するのが妥当とされる。

■男系継承を神統にまで敷衍すべきでない理由

竹田氏の著書『天皇の国史』(p61)によれば、平成の小泉純一郎内閣で皇位継承に関する議論が生じた際に、皇統の原理を変更しようとする人の間から、「皇祖神である天照大御神は女神であり、最初の継承は女系継承だったではないか」と指摘され、男系継承に拘る必要はないとの意見が出された。この意見に対する竹田氏の意見は次の通り。また神統に万世一系の枠組みで捉えること自体が妥当でないと主張。

①神武天皇が初代天皇であり、それ以前に皇位も皇位継承もないため、神話を皇位継承の話に持ち込むこと自体が妥当せず、男系継承の例外にならない。

②天照大御神は神であって、男神と女神の別は、生物の雄雌の別とは次元が異なる。神に生物と同様に遺伝子がある考え方に無理がある。

③天照大御神は天之忍穂耳命に高天原を"知らす"地位を継承していない。※天照大御神は孫の邇邇芸命に天壌無窮の神勅として"知らす"地位を継承。

④天照大御神のみが皇祖神ではない。天照大御神は父親である伊耶那岐神から、高天原を"知らす"よう任命され、いうなれば伊耶那岐こそ皇祖神である。

⑤天之忍穂耳命は天照大御神と須佐之男命の子である。

■統治任務の委託者と受託者

天照大御神が皇祖神(皇室の祖とされる神)だから、男系継承は絶対ではなく、女系継承も問題ないとする意見に対する反論を述べる。男系継承は地上界を知らす(治める)という任務を行う統治者の適格性に関するルールである。よって地上界を治めるように孫のニニギに指示(天壌無窮の神勅と呼ぶ)をした天照大御神は、地上界の統治者には該当しない。地上界統治に関しては、あくまでも天照大御神は指示者(委託者)であり、指示を請け負う受託者ではない。ちなみに天照大御神は地上界統治においては委託者、天上界統治においては受託者の立場である。天上界統治の指示は、父親のイザナギから誕生の際に与えられている。

皇位とは、天照大御神から受託した地上界統治という任務を遂行する地位であり、その皇位を引き継ぐ者の適格性が万世一系、つまり男系継承というルールが守られてきた。女系継承容認論者は、ここで天照大御神が女性だから男性継承でなくてもよいとする論陣を張ることがある。これは皇位の任務である地上界統治に関して、委託者と受託者の立場の混在しているにすぎない。仮に天照大御神に地上界統治の経験があって、それを孫のニニギに継承するという段取りであったならば、女系継承も可能と解釈できる。しかし天照大御神は天上界を治めるのみで、地上を治めることはしていない。

皇位継承の男系継承は、地上界統治者の適格性を問う際に適用されるルールである。したがって天照大御神を皇位継承(任務の受託者の間で適用されるルール)の枠組みで語ることは不敬であり、天照大御神の性別と男系継承ルールを紐付けることは不当である。統治指示に関して、委託者と受託者は峻別して考えるべき事柄である。

天照大御神は神であり、寿命はない。天照大御神は天孫ニニギに地上界統治の指示を与えた際は、寿命の無いニニギがずっとその任務を遂行すると思っていたに違いない。しかし天孫ニニギは地上界統治の旅の途中で有限の寿命を持つ体になってしまった。自分はいずれ死ぬため、天照大御神からの指示をいかに遂行するかは重大なテーマだったに違いない。その結果、品質を落とさずに任務継承できるだろうと実行されたのが男系継承であった。つまり男系継承は天照大御神との約束を果たす許容された手段であり、これ以外の手段は任務放棄となる可能性がある。

■天上界の継承ルール

男神イザナギの指示により天照大御神は天上界を知らすことになった。天照大御神は神様であり寿命がないため、理論上、ずっと天上界の統治者として君臨し続ける。従って地上界のように皇位継承などは存在しない。ここで仮に天照大御神に寿命が発生した場合を考えると、天上界の皇位継承問題が生じる。父親である男神イザナギの指示を果たすために天照大御神は誰に継承するでしょうか? 男神イザナギの娘である天照大御神は男系女子であり、女系女子ではない。ここでも男系女子に限定か、女系女子も可能か、意見が割れることが想定される。