■皇統・男系継承の起源
天照大御神が天孫ニニギノミコトに"地上界を知らせ(治めよ)"と指示(天壌無窮の神勅と呼ぶ)した時、天照大御神は天孫ニニギノミコトがこの先ずっとその任務を遂行してくれると思ったに違いない。なぜなら神様に寿命はないからだ。従って理論上、今でも天上界は天照大御神が統治している。しかし天孫ニニギノミコトは地上界に降臨(天孫降臨)後、コノハナサクヤヒメ(木花咲耶姫)との結婚に際して、寿命が発生する大失態をした。いずれ死を迎える天孫ニニギノミコトは天壌無窮の神勅を果たせなくなるため、任務遂行を継承する手立てを考える必要が生じる。結果、男系継承により任務遂行の品質を維持できると話が纏ったようだ。男性継承であれば、直接的な神勅の受託者である天孫ニニギノミコトでなくても、許容されることになったと思われる。
繰り返すが天照大御神にとっては元来、皇位継承は想定していない事態である。その苦肉策として男系継承が認められたと考えられるので、これを止めるというのは、任務不履行と同義と考えることができる。
最重要課題は、いかに神勅の任務を果たすかである。最初の大失態は天孫ニニギノミコトの寿命の発生であり、それを打開するために始まった男系継承という皇位継承ルールである。今後、第二の大失態があるとすれば男系継承を止めることだろう。
■正統統治者の再臨のシナリオ (天子降臨)
仮に地上界で男系継承が終焉し、天照大御神の神勅である地上界を知らす(治める)任務を十分に果たせない状態になった時、天照大御神は何を考えるでしょうか。一つのシナリオとして、再び天照大御神が統治するよう天上界出身者に神勅を下し、地上界に再臨させる方法がある。候補としては、誓約によって天照大御神と須佐之男命との間に誕生した男神五柱のうち、天孫ニニギノミコトの父親でもある天之忍穂耳命(アメノオシホミミ)である。アメノホシホミミは天照大御神の直接の子であるから、この出来事は「天子降臨」と呼べるだろう。アメノホシホミミは神様であり寿命はなく、皇位継承問題は生じない。
しかし地上界には天孫ニニギノミコトの男系子孫は沢山おり、それらを全て無視してアメノオシホミミが即位するという展開は選択肢の一つに過ぎない。個人的には、天照大御神がアメノオシホミミに下す神勅は、アメノオシホミミが地上界を知らせ(治めよ)…ではなく、アメノオシホミミに地上界を立て直せ…という内容かもしれない。つまりアメノオシホミミは既存の皇位継承ルールに戻すことが任務であり、その任務が無事に終われば再び天上界に戻ってこい、という内容でも良いと思われる。