· 

年表_数学/情報_18-FH


■18世紀前半(1701~1750)

西暦 人物 出来事 (発見/発表/発明/現象) メモ
1701        
1707 レオンハルト・オイラー スイス オイラー、誕生

"解析学の化身"と称されるレオンハルト・オイラーは、スイスのバーゼルに生まれた。父親はアマチュア数学者としての才能はあったが、カルヴァン派の牧師になったため家族は間もなく赴任先となる近くの村に引っ越した。父親は息子オイラーが村の教会牧師を継いでくれることを望んだため、オイラーは神学・ヘブライ語を学ぶために1720年、13歳でバーゼル大学に入学した。バーゼル大学ではオイラーの才覚は、ベルヌーイ一家ヨハン・ベルヌーイの目に留まり、週1回の個人授業を行ってくれたということだ。オイラーはヨハン・ベルヌーイの息子のダニエルとニコラと親密になる機会となった。後にヨハン・ベルヌーイはオイラーの父親を「レオンハルトは代数学者になるよう運命づけられているから、牧師にさせたいという願いを捨ててもらえまいか」と説得している。オイラーの数学研究は1727年から始まる。

1706

ウィリアム・ジョーンズ イギリス

書物『数学入門』

(シノプシス・パルマリオラム・マテセオス)

円周率の記号πを使用

ジョーンズは初学者向けの数学書を著し、微分積分、無限級数などの定理を扱った。ここで初めて円周率を記号πが使われたとされる。この時は「周囲(periphery)」の意味でπが使われた。但し、オートレッドが1647年にπと使ったとか、バローが初めて使ったとか言い伝えられてもいる。

※最終的にπが定着したのは、オイラーが解析学の本の中で円周率の記号として用いた1748年以降だとされる。

1718 アブラーム・ド・モアブル フランス

書物『偶然論』

正規分布,標準正規分布

フランスで国教をカトリックで統一する動きから逃れるため、プロテステントのモアブル一家はイギリスに移住し、モアブルは賭博家や投機家に対してアドバイスをして生計を立てていた。そうした背景で著したのが『偶然論』であり、確率論の近代的な最初の書物とされる。本書にて(N枚の)コイン投げ(2項分布)の確率が描く左右対称のベル状曲線(正規分布)となる関数を特定している。

(N枚の)コイン投げの確率の中で、まず変数k(N枚中"表"がk枚出る場合)から変数zへの変数変換を行っている。変数zへの変換により正規分布の平均値(μ)がN/2からゼロに平行移動し、1目盛りが√N/2となるよう拡大・縮小される。つまり、z={k-(N/2)}/(√N/2)とされ、k=N/2の時z=0となり、kが√N/2増加することにzは1増加するよう調整される。この変数zに対応する確率f(z)は次のような関数で表現される。

f(z)=1/√(2π)・exp(-1/2z^2)

※後にラプラスがコイン投げ(2項分布)に限らず、もっと多くの確率現象に関しても極限として正規分布曲線(ベル曲線)が現われることを証明する。

1725 アブラーム・ド・モアブル フランス 書物『生命年金』  

1728

ダニエル・ベルヌーイ スイス

バーゼル問題

※平方数の逆数の無限和(級数)

(逆平方無限和,逆平方級数)

数学者ダニエル・ベルヌーイは「平方数の逆数を無限の先まで全て足すといくらになるか」というバーゼル問題と呼ばれるものを提示した。ベルヌーイ自身は、ゴールドバッハへの手紙で極めて8/5に近いと書いた。

1/(1^2)+1/(2^2)+1/(3^2)+1/(4^2)+… = 1/1+1/4+1/9+1/16+… ≒ 8/5

※後にリーマンにより、この級数をゼータ関数と定義し、s=2に相当するのがバーゼル問題

※ゴールドバッハは翌年1729年にこの値を1.6437と1.6453の間だと突き止めた。また同じくバーゼル出身のレオンハルト・オイラーも1731年に1.644934まで得ている。

1735

レオンハルト・オイラー スイス

バーゼル問題の解答(π^2/6)

※逆平方無限和と円周率

ゼータ関数(オイラー・ゼータ)の発見

引き続き、オイラーはバーゼル問題(自然数の逆2乗無限和)に取り組み、執念で20桁まで計算した(1.64493406684822643647)。オイラーはこの数に6を掛けて、平方根を求めると円周率となることを突き止めた。つまり、∑(平方数の逆数)=(π^2)/6となる。

1/(1^2)+1/(2^2)+1/(3^2)+1/(4^2)+… = 1/1+1/4+1/9+1/16+… = (π^2)/6

※この結果の証明にはさらに10年の歳月を要する。

当時、微積分学の発見により三角関数などの微積分を使って円周率を無限級数(無限和)で表していた。バーゼル問題(逆平方無限和)は三角関数で表されていないが、収束値として円周率が出てきたことに数学者は驚いた。

オイラーは、この研究を発展させ、逆4乗無限和(∑(1/(n^4)))、逆6乗無限和∑(1/(n^6))も検証し、偶数乗の逆数無限和の場合には"円周率"が現われることを確認している。

  レオンハルト・オイラー スイス

自然数和の収束問題

※ゼータ関数のs=-1の場合

バーゼル問題(自然数のs乗逆数無限和)の研究を続けたオイラーは、sが-1の場合を考えた。つまり、s=-1とは全自然数の和(逆-1乗無限和)となるが、オイラーはこれが無限発散するのを避ける巧い解釈を施し、収束値(-1/12)として計算した。

オイラー・ゼータ(ζ=-1)=1+2+3+4+5+…=-1/12

1737 レオンハルト・オイラー スイス

逆素数無限和の発散

ギリシャ時代にピタゴラスが素数は無限に存在することを発見したが、オイラーは逆素数無限和が無限大に発散することを示し、同様に素数の無限性を証明した。重要な点は、逆数無限和は有限値に収束する場合(逆2冪乗無限和は1に収束)もあるが、逆素数無限和では発散した点が、素数の分布(飛び方)についても示唆している。

一般に等比数列は加速度的な数の飛び方になるので、その逆数和は収束し、一方で等差数列は等速度的な数の飛び方になるので、その逆数和は発散する。逆素数無限和が発散したということは、素数の分布は加速度的よりは等速度的(ゼロ加速)な分布に近いと言える。

1737 レオンハルト・オイラー スイス

オイラー積

※逆平方無限和と素数と円周率

バーゼル問題(自然数の逆s乗無限和)の研究を続けたオイラーは、逆平方無限和(逆2乗無限和)が素数に関する無限積を使っても表せることを発見した。

(逆平方無限和)=2^2/(2^2-1)×3^3/(3^2-1)×5^3/(5^2-1)×7^3/(7^2-1)×…

上記の右辺をオイラー積と呼び、この等式は素数と円周率を結び付ける初めての関係式となった。

■オイラー・ゼータとリーマン・ゼータ

オイラーはバーゼル問題を研究する過程で、ゼータ関数(オイラー・ゼータ)を発見した。オイラー・ゼータは、実数域を対象としたが、後に複素数域まで拡張したのがリーマンであり、リーマン・ゼータと呼ばれる。

1742 クリスティアン・ゴールドバッハ プロイセン

ゴールドバッハ予想

ゴールドバッハはオイラー宛ての手紙で「6以上の数は3個の素数の和である」と書いた。オイラーの返事には「4以上の数は2個の素数の和である」と書いた。後者の方を現在、ゴールドバッハ予想を読んでおり、未解決問題となっている。

※素数が自然数の元素だとすれば、素数の組み合わせで全ての自然数が表されるというのはそうであった欲しい予想である。

1743 レオンハルト・オイラー スイス

オイラーの恒等式

cosx=1/2(e^(ix)+e^(-ix))

sinx=1/(2i)(e^(ix)-e^(-ix))

 
1746  レオンハルト・オイラー スイス

虚数の虚数冪は実数

i^i=e^(-π/2)

 
1748 レオンハルト・オイラー スイス

書物『無限解析序論』

無限級数

関数の概念

現代的な表記法

(π,e,∑,f(x),iなど)

e^(±ix)=cosx±isinx

cosx=1/2(e^(ix)+e^(-ix))

sinx=1/(2i)(e^(ix)-e^(-ix))

1冊目は、解析学の無限過程、つまり無限級数展開、無限積、連分数、代数的級数、三角級数に関する総和を扱っている。オイラーは、いかなる関数でも有限もしくは無限の冪級数で表すことができると信じていた。

本書でオイラーは、現在も使われる表記法を導入している。円周率をπ、ネイピア数をe、和を∑、関数をf(x)、e^x、logx、sinx、cosx、三角形の角をA,B,C、辺をa,b,cとして表した。

指数関数と対数関数を極限による新しく定義した。nが無限大に向かう時、

e^x=(1+x/n)^nの極限、logx=n(x^(1/n)-1)の極限、

e^x=1+x+x^2/2!+x^3/3!+...+x^n/n!+...となり、これはx=1の時、ネイピア数e=2.7182...が求められる。

オイラーは√-1の代わりに虚数の記号iを導入し、いかなる複素数もa+biと書けるようになった。x(実数)を±ix(純虚数)とすると、

e^(±ix)=(1-x^2/2!+x^4/4!-...)±i(x-x^3/3!+x^5/5!-...)と表され、既に前時代のニュートンやライプニッツらによる三角関数の級数展開が知られていたので、次のように整理される。

e^(±ix)=cosx±isinx

ここからオイラーの恒等式(1743年)が直ちに導かれる。

cosx=1/2(e^(ix)+e^(-ix))

sinx=1/(2i)(e^(ix)-e^(-ix))

(e^(ix))^n=e^(i(nx))より、(cosx+isinx)^n=cos(nx)+isin(nx)として表される。

虚数の虚数冪(i^i)は実数(e^(-π/2)となることを証明した。

1749 ピエール・シモン・ラプラス フランス

ラプラス、誕生

 
1750