■年表
西暦 | 人物・機関 | 国 | 出来事 (発見/発表/発明/現象) | メモ |
1867 | ジェームズ・C.マクスウェル | イギリス |
電磁波の速度式:v=1/(εμ)^1/2 ※ε:真空誘電率, μ:真空透磁率 |
相対性理論を構築する原理の一つである「光速度不変の原理」とは、観測者や光源の運動状態に関係なく真空中(宇宙)を走る光の速度は常に約30万km/sだと信じることだ。これは宇宙の移動制限速度とも言える。電磁気学を創立(1865年)したマクスウェルは電磁波の存在を予言し、翌々年には電磁波の速度式を提示した。真空誘電率と真空透磁率は実験より計測され、約30万km/sと求められた。この値は、アルマン・フィゾーによる歯車を用いた光速度測定(1849年)の結果と概ね一致することから、電磁波は光であると確信する一因となった。 ※なお光=電磁波が決定的となったのは、ヘルツによる電磁波の検出(1888年)である。 |
1882 | アルバート・A.マイケルソン | アメリカ |
真空中の光速度の精密測定 (秒速299853±60km) |
光速度の有限性を示すことに成功した初期の実験では、天体現象である"木星の衛星食"(オーレ・レーマー/1675年)や"年周光行差"(ブラッドリー/1728年)が利用された。その後、歯車を利用したアルマン・フィゾー(1849年)や、回転鏡を利用したレオン・フーコー(1850年)など地上の実験室でも測定可能な方法が発案され、光速度測定は徐々に精度を高めていった。1882年にマイケルソンが実施した光速度の精密測定は、フーコー発案の回転鏡による測定方法に改良を重ねたものである。なおこの測定精度は約45年後の1926年にマイケルソン自身によって更新される。 |
1883 | エルンスト・マッハ | オーストリア |
書物『力学 批判的発展史』 |
アインシュタインが青年時代に読み、その物理世界観に影響を与えた書物である。マッハはニュートン力学が暗黙的に認めている絶対空間や絶対時間について本書にて批判を浴びせた。アインシュタインの相対性理論の確立には、このマッハによるニュートン力学への批判精神を引き継いだ延長線上にあると見ることができる。要するに、同じ場所にいても観測者の運動状態によってはイベントの発生時刻は異なって見えること、時間の進み方(テンポ)は異なることなど。 |
1887 | アルバート・A.マイケルソン |
アメリカ アメリカ |
マイケルソン=モーリーの実験
真空中の光速度の検証 ⇒光速度は常に一定のようだ |
トマス・ヤングによる光の干渉現象(1801年)の発見以降、マクスウェルによる電磁気学の創立(1865年)、ヘルツによる電磁波の検波(1888年)、マルコーニによる無線通信の実験(1895年)などの成功により、光の波動説は定着した。しかし波動説により光の諸現象は説明できるものの、その前提となる光を伝える媒質(エーテル)の検出はされていなかった。ホイヘンスが書物『光についての論考』(1678年)にて光の波動説を提唱した時、同時に宇宙を満たす光を伝える媒質としてエーテルに求めるべき性質も提示した。その後、フレネルにより静止エーテル説(1802年)が提唱され、19世紀後半には物理学者の常識となった。静止エーテル説では、 |
1905 | アルベルト・アインシュタイン | ドイツ |
【特殊相対性理論】 論文『運動物体の電気力学』 原理①(特殊)相対性原理 原理②光速度不変の原理 |
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1905 | アルベルト・アインシュタイン | ドイツ |
【特殊相対性理論】 論文『物体の慣性はその物体に含まれるエネルギーに依存するか』 質量とエネルギーの関係式(E=mc^2) |
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1907 | アルベルト・アインシュタイン | ドイツ |
【一般相対性理論】 等価原理の着想 |
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1911 | アルベルト・アインシュタイン | ドイツ |
【一般相対性理論】 論文『重力場の光の伝わり方』 重力場による光の曲進を指摘 |
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1914 | エルヴィン・フロイントリッヒ | ドイツ |
重力レンズ効果の観測失敗 |
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1915 | アルベルト・アインシュタイン | ドイツ |
【一般相対性理論】 論文『一般相対性理論』(11/4) 原理①(一般)相対性原理 原理②光速度不変の原理 原理③等価原理 |
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1915 | アルベルト・アインシュタイン | ドイツ |
【一般相対性理論の実証】 水星の近日点移動の説明 ※惑星ヴァルカン説の否定 |
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1915 | アルベルト・アインシュタイン | ドイツ |
【一般相対性理論】 論文『重力場方程式』(11/25) 重力場方程式(アインシュタイン方程式) Rμν-1/2gμνR=(8πG/c^4)Tμν |
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1917 | アルベルト・アインシュタイン | ドイツ |
【相対論的宇宙論】 論文『一般相対性理論に基づく宇宙論的考察』 重力場方程式が描く宇宙像 宇宙項の導入 |
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1919 | アーサー・エディントン | イギリス |
【一般相対性理論の実証】 重力レンズ効果の観測成功 |
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1963 |
フリッシュ スミス |
アメリカ アメリカ |
【特殊相対性理論の実証】 高速移動物体の時間遅延の実証 |
特殊相対性理論では物体の移動が光速度に近づくほど、静止系(観測者)から見てその物体の時間のテンポは遅延する。フリッシュとスミスは宇宙線として0.995cで飛来するμ粒子の崩壊する平均寿命をモノサシとして時間遅延を測った。静止系でのμ粒子の平均寿命は約2×10^-6秒であるが、高速移動するμ粒子では平均寿命の延びが観測された。 |
1964 | 欧州 |
【特殊相対性理論の実証】 光の相対論的速度合成則の実証 ※光速度不変の原理の実証 |
非相対論的速度合成則とは、要するにニュートン力学における速度合成則である。静止系から見て、速度uで走れる車に、速度vの弾を打ち出す砲台を載せた場合、最終的な弾の速度wは単純和(w=u+v)で示される。しかし、この速度合成則では静止系から見て超光速を許容する。アインシュタインの特殊相対性理論では光速度不変の原理に基づき、相対論的速度合成則として以下の式を導いた。
粒子加速器から発生させた光速度に近い0.99975cのπ中間子 |
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1971 |
ハーフィール キーティング |
【一般相対性理論の実証】 低重力場の時間遅延の実証 |
原子時計(精密な時計)を積んだ飛行機を飛ばして、地上に置いた原子時計に対する時間の進み方(テンポ)を比較した。その結果、相対性理論の予測値通りの時間遅延が観測できた。この場合、特殊相対性理論と一般相対性理論の双方の効果が合わさり、静止系たる地上に対しての時間のテンポの違いとして反映される。 特殊相対性理論によれば、光速度に近づくほど(静止系に対して)時間が遅れるが、地球の自転スピード(時速1700km)、飛行機の巡航速度(時速800km)と比べると光速度(時速10.8億km)は圧倒的に大きく、こちらの影響は小さい。一方で、一般相対性理論では重力が強いほど(地上に近いほど)時間が遅れるため、重力ポテンシャルが地上よりも3%ほど小さい高度10000mを飛ぶ飛行機の方が影響は大きい。 |
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1974 |
【一般相対性理論の実証】 重力波の間接検出 ※連星パルサーのパルス周期の変化 |
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1984 | 日本 |
【一般相対性理論の実証】 重力赤方偏移の観測成功 ※中性子星に由来 |
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2015 | アメリカ |
【一般相対性理論の実証】 重力波の直接検出 ※ブラックホール連星衝突に由来 |
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2020 | 日本 |
【一般相対性理論の実証】 重力赤方偏移の検出成功 ※地上標高差に由来 |