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年表_医学/生物学_20-Q2


■20世紀第2四半世紀 (1926-1950)

西暦 人物 出来事 (発見/発表/発明/現象) メモ
1926 サムナー アメリカ 酵素ウレアーゼの結晶化(単離)

初のタンパク質の結晶化

サムナーは、ナタマメに含まれる尿素分解酵素ウレアーゼ(尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解)の結晶化(単離)に成功。タンパク質の結晶化は、X線等を用いたタンパク質構造解析の出発点であり、酵素化学の発展の糸口となった。
1927

ハーバード・エバンス

キャサリン・ビショップ

イギリス ビタミンE(トコフェロール)  
1927 マラー アメリカ

X線照射による人為突然変異

マラーはX線をショウジョウバエに照射する実験を行い、人為的に突然変異を起こせることを発見した。ショウジョウバエを用いたのはマラーがモーガンの研究室にいたため。自然突然変異は確率が低いため、人為突然変異の発見は遺伝学の研究に大きく貢献する。
1928 カール・ローマン ドイツ ATP(アデノシン酸リン酸)の単離  
1928 アレクサンダー・フレミング イギリス

ペニシリンの発見

※世界初の抗生物質

フレミングは培養中の黄色ブドウ球菌が、アオカビの混入(コンタミ)により溶解していることに偶然気付いた。アオカビの培養液のろ液から抗生物質を発見し、ペニシリンと命名。ペニシリンは細菌(バクテリア)の細胞壁の合成を阻害することで増殖を妨げるため細菌性感染症には有効であるが、ウイルス性感染症には効かない点に留意。

ペニシリンの発見・利用により、20世紀に起きた戦争で亡くなった人よりも、多くの人を救ったと言われている。

         
1928 ノースロップ アメリカ

酵素ペプシンの結晶化

酵素ウレアーゼの結晶化に成功(1926年)したサムナーと同様の方法で、ノースロップはペプシン(胃で作用するタンパク質分解酵素)の結晶化に成功。ペプシンがタンパク質であることを証明。
1929        
1930        
西暦 人物 出来事 (発見/発表/発明/現象) メモ
1931 アドルフ・ヴィンダウス ドイツ ビタミンD  
1932 チャールズ・グレン・キング アメリカ ビタミンCの単離に成功  
1933 カラー スイス ビタミンAの構造式  
1934        
1935 ウェンデル・スタンリー アメリカ

タバコモザイクウイルスの結晶化

ウイルスの物質説の実証

初めてウイルスの分離・結晶化に成功した。当時、電子顕微鏡が発明され、ウイルスを可視化するための試料になった。なおウイルスは結晶化後も活性(感染力)があり、ウイルスが生物というよりも分子(物質)に近いと考えるベイエリンクの主張の正しさを実証した。
西暦 人物 出来事 (発見/発表/発明/現象) メモ
1936        
1937        
1938

ラティマー

J.L.ブリアリー・スミス

南アフリカ

シーラカンスの現生種を確認

南アフリカ沖にてシーラカンスの現生種を生きたまま発見。
1938

ノースロップ

アメリカ

バクテリオファージの結晶化

バクテリオファージの初の結晶化に成功。
1939 ウラジミール・エンゲルハルト ソ連

ATP分解酵素(ミオシン)の特定

ATPに筋肉繊維の一部のミオシンを与えたところ、ATPの分解を見た。
1940        
西暦 人物 出来事 (発見/発表/発明/現象) メモ
1941        
1942 セント・ジェルジ・アルベルト アメリカ

生体外での筋肉収縮の確認

生体外に筋肉繊維アクトミオシンを取り出し、ATPを投与すると、アクトミオシンが収縮することを確認した。「筋肉収縮を生体外(in vitro)で捉えた。」という彼の言葉は有名。以降、生体内で起きる様々な仕事のエネルギーにはATPが作用していると理解される。
1943 レオ・カナー アメリカ 自閉症の発見 カナーは1943年に自閉症に関する重要な論文を発表し、翌年にはアスペルガーも重要な論文を発表。現在は正式には自閉症スペクトラム障害と呼ぶ。
1943

ワクスマン

シャッツ

アメリカ

アメリカ

ストレプトマイシンの発見・単離

結核治療の最初の抗生物質

ワクスマンは土壌生物由来の有機化合物とその分解を研究し、生涯、20種類超の抗生物質を発見した。なお抗生物質はワクスマンが考案した用語である。1943年、ワクスマンの教え子シャッツが発見・単離したストレプトマイシンは、結核菌(1882年にコッホが発見)に対する抗生物質であり、呼吸感染し不治の病として恐れられた結核菌のタンパク質合成・代謝・成長を妨害する働きを持つ。日本の結核死亡率の推移(,)では、戦前は総人口の約0.2%(年率)だったのが、1950年代から急激に減少している。

1943

アルバード・ホフマン

スイス

LSDの幻覚作用

 
1944 オズワルド・エイブリー アメリカ 遺伝子の実態はDNA 従来、遺伝子はタンパク質という考え方が主流であったが、エイブリーは肺炎双球菌を用いた実験でタンパク質ではなくDNAであることを突き止めた。
1945        
西暦 人物 出来事 (発見/発表/発明/現象) メモ
1946        
1947        
1948        
1949 カール・R.フォン・フリッシュ オーストリア 偏光を感じる視覚

動物学者フリッシュは、ミツバチの行動(色を見分けられるか、どうやって餌場を仲間に伝えるか等)を研究し、ミツバチの目は青空の偏光を感じ取ることができることを突き止めた。太陽光が地球の大気に散乱される時、散乱光の一部は偏光される。ミツバチの眼には偏光板(放射状に並んだ視細胞)が入っており、青空を見れば太陽の方向が分かる。また太陽が雲に隠れることがある曇りの日でも、一部青空が見えていれば、そこから晴れの日同様に太陽の方向が分かる。

ミツバチが巣箱で餌場の情報をダンスで仲間に伝える際には常に青空が必要であったが、フリッシュはその理由が分からなかった。当時、オーストリアのグラーツ大学の教授として物理学や天文学の教授と交流する中で、青空と言えば偏光ではないか…という耳よりな情報を得たことが解明の手助けとなった。

1950 シャルガフ オーストリア シャルガフの経験則

シャルガフは、様々な試料(鮭精子・ウニ精子・酵母・ヒト臓器など)からDNAを抽出・精製し、酸処理でフリーとなった4種類の塩基をペーパークロマトグラフィーで分離し、各塩基の含有比を測定した。その結果、生物の種類に関係なくA(アデニン)=T(チミン)とC(シトシン)=G(グアニン)となる法則を発見した。またシャルガフは生物によりプリン塩基(AとT)とピリミジン塩基(CとG)の比率が異なることを発見した。以上の2法則をシャルガフの経験則と呼ぶ。シャルガフの経験則は、DNA二重螺旋構造(1953年)を導く重要な手掛かりの一つとなる。